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2005/07/30

高齢化社会における携帯電話の姿

出生率の低下、平均寿命の長期化によって高齢化社会は日本だけではなくますます進んでいるが、これまでの携帯電話は、日本では主にメールやインターネット・ゲームなど豊富なコンテンツを売りにする若者向け市場、欧米ではスケジューラーや社内アプリケーションとの接続などPDAを取り込んだ多機能を売りにするビジネス向け市場を中心にしてきており、高齢者向け市場はどの企業からもないがしろにされてきた。そんな中、日本では高齢者にターゲットを絞り、電話しかできない、すなわち使い方が簡単なことを売りにした携帯電話「ツーカーS」が大ヒット商品となった。たしかにこれも、高齢者向け携帯電話のひとつの形だろう。ITのことなどまったくわからない高齢者に対し、極度に機能を単純化し固定電話感覚で使用できるものにしている。しかし、これからの高齢者がすべて「ツーカーS」の想定ユーザーのような人々ばかりではない。企業でパソコン・ワープロが使われだし、家庭にもコンピューターゲームが入ってきて日本でもすでに20年以上がたち、高齢者=ITに弱いという図式はもう成り立たなくなっている。実際に、パソコンを駆使しインターネット上で活躍する高齢者も、男女を問わず増え続けている。だが、彼ら・彼女らも気持ちは若者同様で中には壮年期に働いていた以上に趣味に起業にボランティアに活動しているはいえ、完全に若者やビジネスマン向けに作られた今の携帯電話では満足できない部分もあるだろう。そこで、本レポートでは、これからの消費の中心となっていくと思われる彼ら・彼女ら「アクティブ・シニア」市場をターゲットとした携帯電話の姿について、ハードウェア(端末)・ソフトウェア(コンテンツ)・ネットワーク(システム)のそれぞれについて提案していく。

1.ハードウェアとしての携帯電話 

 「アクティブ・シニア」を一言で表すならば、『体は老いても気持ちは若い』といわれている。いや、実際持久力や技術が要求されるスポーツなどでは、老いたどころかむしろ若者もかなわないような力を発揮する高齢者も多い。しかし、眼や耳といった感覚器官の衰えはやはり避けられないようで、パソコンならなんとか使えても携帯電話の小さな画面が見にくかったり、あるいは話し声が聞こえにくいためつい声が大きくなってしまったり、パソコンのキーボードは打てても携帯電話の小さなボタンは押しにくいといった悩みを抱えているようだ。だが、今の若者向け携帯電話は多機能化と同時に小型化が進み、画面やボタンはますます小さくなっており、彼ら・彼女らにはますます使いにくいものになってしまっているようだ。そこで、「アクティブ・シニア」向けの携帯電話は、ある程度大型に作り、多少操作が複雑になってもボタンの数を少なくし一つ一つのボタンが大きくなるようにするべきであろう。また、画面の大型化も必要だが携帯性を考えれば限界があるため、付属品としてプロジェクターを装備できるようにするという手もある。また、光でキーボードを投射しその上に手を置くと入力が検知されるヴァーチャル・キーボードを導入し、携帯電話本体の細かいボタンを押さなくてもいいようにするという手も考えられる。

2.ソフトウェア(コンテンツ)としての携帯電話

携帯電話のコンテンツの現在の主流は音楽や映像・ゲームの配信である、だからそこに高齢者向けの囲碁・将棋や演歌・時代劇などを流せばいい…という単純な考えでやっていけるはずがないのは誰もがもうわかっている。では、「アクティブ・シニア」が求めるコンテンツとはどのようなものだろうか。

彼ら・彼女らは、主に余暇を旅行・レジャー・趣味に使っている。では、それらに関する情報を流せばいいのかというとそうではない。単なる情報の押し付けに反応する人など若者にすら減っている。「アクティブ・シニア」は若者以上に人と人とのつながりを求めている。たとえば旅行にしても、これまでの単なるパッケージツアーや若者の自由旅行と違い、クラブツーリズムやJRのジパング倶楽部など参加・体験型で、参加者・主催者と仲間意識の持てるツアーが人気を博している。ネットワーク上のコンテンツで、同じように参加意識・仲間意識が持てるものといえばやはりホームページやブログであろう。実際にパソコンでホームページを作り、そこからネット上のコミュニティに参加している高齢者は数多い。だが、さまざまなコミュニティに参加して活発に活動している彼らが、家のパソコンの前にいられる時間はそう長くない。しかし今の携帯電話からではパソコンと違いホームページやブログの作成・更新、掲示板・チャット等への書き込みには制限があることが多いので、この面の改善が必要であろう。また、携帯電話よりパソコンが中心となるだろうがより参加の度合いを強めるものとして高齢者向けネットワークゲームというのも検討されていいだろう。

3.ネットワーク(システム)としての携帯電話

前節でも述べたように、「アクティブ・シニア」にとっては人と人とのつながりそのものがコンテンツである。それも、一般的に高齢者について言われるように子供や孫といった家族とのつながりを重視するのではなく、家族よりも趣味などのネットワークを重視する傾向にある。料金制度などもこの点をより重視したものにする必要がある。また携帯電話のキャリアを変更してもそのままの電話番号でつながる番号ポータビリティ制度が日本でももうすぐ導入されるが、彼らは若者よりも一度築いた関係を維持しようとする意識が強いので、電話番号だけでなくメールアドレス等も維持できるようにするべきであろう。

また、「アクティブ・シニア」は自分では健康不安を感じておらず、さまざまなことに若者同様にチャレンジしていく。その分周囲の不安はより大きくなりがちである。そこで、GPS機能を利用して非常時に警察・病院や家族あるいは近くにいる人に、あらかじめ登録した住所・氏名や既往症などを通報するシステムも(個人情報保護との兼ね合いはあるが)必要かもしれない。

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